星の明るさや温度を測るとその星の寿命がわかります。宇宙の温度を測定すると現在の宇宙の年齢がわかります。銀河の群れ具合(銀河の分布のゆらぎ)を測定すると、それら銀河たちがどのように成長してきたかわかります。天文学では明るさや温度やゆらぎから、天体の進化を推定します。この系統的な手法が統計力学です。統計力学はいわば天文学の強力な道具なのです。このコースではこの統計力学を基礎から学びます。
統計力学は、多数の粒子の集団を扱います。星が放射する光子や、宇宙を飛びかう素粒子を個々に見ただけでは、天体や宇宙の全体像は見えてきません。粒子の数が多ければ多いほど、ゆらぎの様相がはっきりして、その平均値からのずれが明確になっていきます。ゆらぎが思いきり大きくなってくると、銀河や星などの天体の構造が見えてきます。
統計力学は、多数の粒子が作るゆらぎを扱うので、確率論的な見方をします。本授業では、独特ですが自然な統計力学の考え方を理解し、さらに統計力学を天体・宇宙へ適用していきます。最後に量子統計力学も紹介しますので、極限的に高密度な白色矮星や中性子星がなぜそういう姿なのかも納得していただけると思います。
春学期に熱力学を学んだ方へ
熱力学は経験則に基づいたマクロな理論でしたが、統計力学は、熱力学とミクロな世界の橋渡しをしている理論になります。
なお本授業では、熱力学や量子力学を学んだことのない方にもご理解いただけるように、エントロピーや量子力学が登場するところではその都度、説明します。
<講義内容>
① 統計力学の考え方 ― 分布関数 ―
② ほとんど独立な粒子の集団 ― 小正準集団 ―
③ 相互作用を及ぼし合う粒子の集団 ― 正準集団 ―
④ 粒子を交換できる集団 ― 大正準集団 ―
⑤ 恒星の温度、宇宙の温度 ― 黒体輻射 ―
⑥ 白色矮星、中性子星 ― 量子統計力学 ―
※受講生の皆様の質問に対応するため、講義内容を追加したり、順番を入れ替える可能性がございます。
単発のご参加・見学の方は、事前に進度とスケジュールをお問い合わせください。
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